道後温泉2050ビジョン
17/64

ストーリー道後温泉2050ビジョンDOGO 2050 VISION | 禁無断複製 | 2023 道後誇れるまちづくり推進協議会© 153-3. 地域ブランディングとマーケティングの基本的考え方[図3-3]多様性・多文化共生につながる道後の歴史(左:養生湯・牛馬湯 右:お遍路文化)② 人口変動とライフスタイル・価値観の変化を意識したターゲット設定のシフトれらを地域経営資源として十分に活かしきれていないのが現状であると言える。具体的には、6世紀末の聖徳太子来浴にまで遡ることができる長い歴史の中で年代ごとに興味深い物語があるものの、それらの大半は地域のサイドストーリー的な小さな扱いでそこここに分散・散逸し、十分な可視化・価値化もされていないため、結果として地域の有する圧倒的な歴史の深さや時代ごとの多様性、そして時を越えた道後の湯の普遍的な価値やそこから学ぶべきメッセージなどはほとんど伝わっていない(その結果として道後温泉本館の存在感だけが突出し、地域全体がそれに大きく依存しているという体質が変わらない)というのが社会一般から見た客観的評価であると言っても差し支えないであろう。まち協や松山市をはじめとするこの30年来の様々な取組みにも関わらず、まち協設立当初から最大の課題として認識されていたこの状況(道後温泉本館への過依存)は残念ながら大きく変わっているとは言えないのが実情であり、これは地域経営の持続可能性という視点から見たときには極めてリスクの高い状態であると考えられる。して、道後温泉の歴史とそこに眠る様々な情報を地域の語る<物タル技術も活用しながら、来訪者がまち歩きを通じて分かりやすく・楽しく理解・体感して頂くことのできる「場(ハード)」や「機会(イベント」の連なり、そしてそれを自然で使いやすいかたちで支援・促進するツールを創出・提供する「歴史・文化ストーリーを軸とした地域ブランディング」を実現する施策を推進していきたい。地域に散在する質・量ともに優れた歴史文化資源を顕在化・体系化し、まちの回遊を通して道後の歴史文化の深み・広がりを伝える地域環境整備によって、本館への過依存体質を改善するとともに、リピーターや滞在日数(連泊)の増加=滞在(湯治)型温泉地への進化を押し進めていくことが求められる。道後温泉は、他の温泉地や観光地と比較しても圧倒的な歴史の深さや抜群の認知度があるにも関わらず、そこのことを踏まえ、道後温泉の保存修理工事の完了、・全館営業再開(2024年7月11日予定)の「次の一手」と語り>として深堀り・整理し、最先端のデジ まち協が設立された30年前と比べ、旅行マーケットの人口構成は大きく様変わりしている。本ビジョンの目標である2050年の推定人口は、日本の総人口1.05億人(ピーク時2008年の1.28億人から2,300万人減)、生産人口5,540万人(同 7,421万人から25%減)と国内需要は大きく減少する一方、外国人居住者は729万人(同 174万人から319%増)に達すると予想されている。海外(インバウンド需要)に目を向けると、中国・台湾・韓国は日本を追うように人口減少に転じる一方、東南アジア諸国やインドは人口増加が見込まれており、中長期的に大きな需要シフトは避けられない状況にある。 今後一層加速するであろう観光・旅行ニーズやライフスタイルの変化を考えると、需要の量(人口)だけでなく質の変化に対する認識も重要である。2050年の旅行需要の核となるのは現在の20~30代だが、現在40代以上の層と比較してこの世代が特に重視する価値観として多様性(ダイバーシティ)、多文化共生(マルチカルチュアリズム)、持続可能性(SDGs)などが挙げられる。この傾向は国内だけでなく海外の同世代についても概ね当てはまるとみて差し支えないだろう。また、これらの価値観のシフトを背景に、単純な経済的価値(価格)や非日常的な贅沢さ・表面的な特別感よりもその地でしか触れることのできない固有の文化や生活のあり方との接触を重視する傾向も、観光・旅行マーケットの成熟とともに強まってくると考えるのが自然であると思われる。 こうした観光・旅行需要者コア層の価値観・関心の変化に加え、上述の外国人居住者比率の増やインバウンドの増加・国籍多様化傾向を考えるならば、道後の歴史に潜在している外湯文化・お遍路文化を現代にバージョンアップして多様性・多文化共生や環境配慮といった価値観を体現していくことが今後のターゲット設定とそれに合せたまちづくりにとって重要になってくる。デジタルを活用した多言語対応やアートを通じた多文化コミュニケーションはその端緒に過ぎず、これらの価値観を訪れる人々(ターゲット層)と積極的に共有し、個々の地域事業者及び地域全体として道後ならではのかたちで様々に表現していくことが求められる。る化」「付加価値化」する施策の全てに共通して基本に据えるべき地域のブランディング及びそのブランドメッセージを届ける先となるターゲット層の設定について、ここで簡単に整理しておきく。様々な個別施策の一貫性・整合性を確保し、それを持続可能なまちづくりを支える資源投下の好循44環につなげていくためには、まちづくりを地域経営戦略的な思考・計画が必須であり、地域として明確なブランディングとターゲット設定はそのために不可欠な観点である。① 歴史・文化ストーリーを軸にしたブランディング本ビジョンにおける具体的な施策については次章(第4章)で整理するが、地域の価値を「見え(エリアマネジメント)として見る視点に立った3.道後温泉2050ビジョンの目指すべき将来像

元のページ  ../index.html#17

このブックを見る